
うつ病が併存するADHDをどう診るか~脳病態に基づく治療のリフレーミング~
東北大学 災害科学国際研究所 災害精神医学分野 准教授 國井 泰人先生
成人期ADHDでは、うつ病など様々な精神疾患を併存しやすく、その診療を最適化するためには、ADHDの脳病態と併存する精神疾患への影響を考慮した治療を検討することが必要となります。今回は、ADHDに併存する精神疾患、うつ病に焦点を当てた治療についての講演でした。
ADHDは、他疾患の有病率が高く、うつ病を発症した際は、その症状がオーバーラップするため、うつ症状を改善していく必要があります。
ADHDの発症原因は、前頭全皮質などの機能低下、神経伝達物質の調節異常(ノルアドレナリン・ドーパミン)、遺伝要因、環境要因です。ノルアドレナリンは、脳内での放出量が多すぎても少なすぎても、その効果は得られません。
インチュニブ(一般名:グアンファシン)は、ADHDの治療薬で、脳内のノルアドレナリンの働きを調整することで、衝動性や多動性を和らげます。中枢刺激薬とは異なり、神経の興奮を鎮める作用があり、特に落ち着きのなさやイライラの改善に効果があります。副作用として眠気や血圧低下が見られることがあります。
注意欠如・多動性障害
ADHD(注意欠如・多動症)は、発達障害のひとつで、主に「不注意」「多動性」「衝動性」といった特性が目立つ状態です。子どもだけでなく、大人にも見られることがあります。
不注意の特徴としては、気が散りやすく、物事に集中し続けるのが難しい、忘れ物やミスが多い、話を最後まで聞けないなどがあります。一方、多動性・衝動性は、じっとしていられない、順番を待つのが苦手、思いついたことをすぐに口にしてしまうといった傾向が見られます。
ADHDの特性は、生まれつきの脳の働き方によるもので、「しつけの問題」や「本人の努力不足」ではありません。本人も努力しているのに周囲と同じようにできず、自己評価が下がってしまうことも少なくありません。
適切な理解とサポート、そして必要に応じた治療(環境調整・心理支援・薬物療法)によって、本人の強みを活かしながら生活しやすくすることが可能です。
精神疾患とお薬は、切っても切り離せない関係です。
患者様の生活環境や、体力、体形、症状の有無、隠れた障害や疾患等によって、医師が適切に調整、処方をいたします。
一人で悩まずに、何かお困りの際はご相談ください。